配役

A:お兄様
妹:主人公。お嬢様
メイド:女の子キャラであれば
親友:なるべくプリ以外のキャラで
神父:プリで
商人:商人系が好ましい






妹:本日お集まりの皆様
妹:私の兄の為に、こんな遠くへとお越しくださり本当にありがとうございます
妹:兄との最期のお別れだというのに、兄のお顔を見せることができないのが心苦しいばかりです
妹:……でも、見せたくないのです
妹:何故なら…
妹:兄は……Aお兄様は、殺されたのだから

(妹、二歩前へ)

妹:お兄様が冷たくなられていたのは、丁度一週間前のことでしたわ
妹:朝食を運びに行ったメイドが、変わり果てたお兄様を見つけたのです
妹:そうでしょう?

(メイド、ログイン)

メイド:は、はい…お嬢様
妹:Aお兄様にお食事を運ぶのは、いつも貴方だったわね
メイド:……そ、そうです
妹:身体が弱く、いつも床に伏せっていたお兄様……私とご一緒にお食事をされることなど
妹:本当に数えるくらいしかありませんでしたわ
メイド:お嬢様……
メイド:A様も…A様も、そのことにはお心を砕いておりました
妹:……繕っても、駄目ですわ
メイド:お嬢様?
妹:私、知ってますの
妹:貴方は、お兄様を恨んでらしたでしょう?
メイド:(!エモ
妹:貴方の弟が事故にあったのは知っていますわ
妹:それの治療に、とてもお金がかかることも
メイド:(…エモ)
妹:……お兄様に、お給金の上乗せを頼んでいたことも
妹:そして、それを断られていたことも
メイド:お嬢様、でも…!
妹:………お兄様の、お食事
妹:最期のお食事は、どんな味がしたのでしょうね……?

(メイド、ログアウト)

妹:可哀想なAお兄様……
妹:そう…お兄様は、毒によって殺されていたのです
妹:我らが一族は……そう、ほんの少し前までは、名の通った名家でした
妹:その頃であれば、毒見係りもおりましたのに……
妹:こんな僻地に追いやられたのには、訳がございますの

(親友、ログイン)

親友:……妹、
妹:近寄らないでくださる? 親友様
親友:……
妹:貴方のお陰で、我が家はこんな有様ですわ
親友:俺は…
妹:これが、お望みでしたのでしょう?
妹:これで、満足されたのでしょう?
親友:ち、違う!
妹:違いませんわ
妹:だって……親友様、貴方が…大聖堂に伝えたのでしょう?
妹:うちから…我が身内から、魔に堕ちし者を出したって…
親友:(…エモ)
妹:確かに、それは事実ですわ
妹:でも、私も…Aお兄様にも、そんな者のことなど関係なかったのに…
妹:…関係なかったのに、何処かの、誰かが、進言でもしたのでしょうね、
妹:「魔に堕ちやすい家など、遠ざけろ」とでも……
親友:俺は…そんなつもりじゃ!
妹:無かった?本当に?
妹:お兄様は、貴方を信じていましたわ
妹:「何か訳があったに違いない」「僕の病を気にして煩わしい場所から遠ざけてくれたのかもしれない」
妹:……本当に、お兄様は…
親友:お、俺は…
妹:貴方の恋人が、お兄様に心変わりしたのが…そんなに悔しかったのですか?
親友:(!エモ
妹:…お兄様は、貴方を信じておりましたわ
妹:貴方から届いた、得体の知れないワインを嬉しそうに飲む程に……

(親友、ログアウト)

妹:お兄様は、穏やかで…とてもお優しい方でした
妹:そして、同時に…とても弱い方でもありました…
妹:人の昏黒な部分を、見ることが出来なかったお兄様…
妹:人を信じることで、逃げていたお兄様……
妹:…そんなAお兄様を救わなければならなかったのに…

(神父、ログイン)

妹:神父様…
神父:…Aさんの…彼の闇は、とても深かった
妹:……
神父:週に一回、彼の部屋に訪れることは…僕にとって、覚悟がいることでした
妹:でも、それは…神父様のお勤めですわ
神父:そうです……僕は、彼の闇を少しでも和らげなければならなかった…
神父:彼の話を聞き、宥め、諭す……
神父:しかし……!
妹:貴方は、お兄様を突き放した
神父:(…エモ
妹:この地に追いやられてから…お兄様は、変わられてしまいましたわ
妹:あんなに穏やかでいらしたのに……
神父:…彼は、日を追うごとに…疑心を強めていました
神父:正直……僕は、彼の話を聞くのが耐えられなかったんです
妹:……
妹:だから
妹:だから、言ったんですね
妹:お兄様に、魔の兆しが見える…と
神父:(!エモ
妹:…神父様、本当に、お兄様に魔の兆しがございましたの…?
神父:そ、それは…
妹:ありませんでしたでしょう?ありはしなかったでしょう?
神父:…
妹:貴方の言葉は、病により弱られていたお兄様の、
妹:お身体も、お心も……何もかもを、傷つけ、壊したのですわ

(神父、ログアウト)

妹:壊れてしまったお兄様を、唯一繋ぎとめているものがございました
妹:昔から我が家に出入りをしていた商人……
妹:外に出ることが適わないお兄様を慕い、珍しい品物や各地の逸話を手土産に
妹:頻繁に我が家を訪れておりました

(商人、ログイン)

妹:………商人様、お久しぶりですわね
商人:うん……久しぶり
妹:もう何ヶ月もお姿を見ていませんでしたわ
妹:ですから、今日も来てくださらないものだとばっかり思ってましたの
商人:そんなこと!…今までは、…そう、仕事の都合で…
妹:あら?そうですの?
妹:商人様は、お兄様を捨てたのですから……来ないと思って当然ではございません?
商人:(!エモ
妹:Aお兄様から聞いたのでは、ありませんわ…
妹:見ていれば、分かりましたもの……貴方達の関係は…
商人:知ってたのか
妹:えぇ。知ってましたわ……知っていましたとも
妹:私も!お兄様も!
商人:(?エモ)何を……
妹:貴方は……嘗て我が家が潰した商社の御曹司なのでしょう?
商人:(!エモ
妹:お兄様、知っておりましたわ…
妹:……貴方が、何の目的で…お兄様に近づいたのかを
商人:違う!
妹:何が?何が違いますの?
妹:私…知ってるって言いましたわよね
妹:…商人様が、最後に我が家を…お兄様を訊ねてきてくださった時の土産…
妹:あの鉢植えは、毒なのでしょう…?
商人:な!何を言って…
妹:ご存知なかった?そんなわけありませんわ
商人:あの花は、首都ではやっていて…
妹:えぇ、そうでしょう。はやらせたのは、貴方ですからね
商人:……
妹:そして、あの花を煎じて飲めば、お兄様の病を一気に進めることができるのも
妹:私、知ってますわ
商人:だったら、鉢植えなんて捨ててしまえば良かったじゃないか!
妹:…言いましたでしょう?
妹:お兄様も、知っていたんです
妹:あの花の危険性を………煎じて飲めば、自分が死んでしまうことを…
商人:なら尚のこと…!
妹:……お兄様のお部屋、お気づきになって?
商人:え?
妹:もう古くて、見っとも無いというのに…お兄様、捨てないんですの
商人:何を…
妹:他の人からだって、たくさん頂いてますのに…
妹:商人様……貴方がお兄様にお渡しなった品は、全て…全てですわ、あの部屋に置いてあります
商人:(!エモ
妹:お気づきになって?商人様
妹:貴方様から頂いた全てを、身の傍に置いたお兄様の気持ちを…
妹:……殺意すらも、捨てられなかった…Aお兄様のお気持ちを…
商人:………そんな……A…

(商人、ログアウト)

妹:恨み、嫉妬、悪意、復讐……
妹:お兄様を死に追いやったのは、そういった毒ですわ……
妹:……お兄様は、絶望しておられた
妹:それでも
妹:それでも、お兄様は……
妹:死を、
妹:私を、選びはしなかった

(妹、一歩後ろに下がり正面を見る)

妹:私だけのお兄様になって欲しかったのに…
妹:お兄様は、毎日、
妹:食事をし、
妹:寝酒を飲み、
妹:話し相手の訪れを待ち、
妹:心惹かれる者からの贈り物に囲まれ、
妹:……私を省みてはくださらなかった
妹:ですから
妹:私、お兄様の枕に仕掛けをしましたの
妹:……中綿に、とてもとても強い毒を染み込ませて

(妹、一歩下がり正面を見る)

妹:お兄様は、毒によって殺されたのです
妹:恨み、嫉妬、悪意、復讐……
妹:そして………愛情…

(少し間を置いて)

妹:本日、兄のためにお集まりの皆様
妹:兄との最期のお別れだというのに、兄のお顔を見せることができないのが心苦しいばかりです
妹:……見せませんわ
妹:見せませんもの

妹:お兄様は…やっと、私だけのものになったのですから




end