こういうのは、台選びが重要だと聞いたことがある。
目の前には、スロット台。
 それを覗き込むが………正直、何が隣の台と違うのかが分からない。
いやいやいや! ここで根を上げては駄目だ!
 何しろ、俺にはするべく崇高なる想いがあるのだから!
出会いは突然とは良く言ったものだ。
しがないプリーストの俺にも、『運命の人』って奴があらわれたわけよ。
「…おい」
 一目会ったその日から〜恋の花咲くこともあ〜る〜。
ぶっちゃけると会ったわけじゃない。臨公広場で俺がぼーっと座っていたら、近くを通り過ぎたんだ。
 その時の俺の衝撃は分かるだろうか? いいや! 分かるまい!!(反語)
まるでミストレスにユピテルサンダーを喰らったかのような感覚。
 いや〜、一目惚れってやつ?
そのを可能な限り目で追って、ってか、目だけじゃくて後も付けて。
 バッチリ名前も調べたともー! あっはっは、ストーカーとか言わない!!
「…おい! 逆毛!!!」
 って、さっきから五月蝿いなぁ、こいつ。
「なんだよ、綿毛」
 俺のポタメモにはコモドが無かったため、同僚のこの綿毛頭に頼んでポタを出させたのが数十分前。
 ……何故、この綿毛は居るんだ?
「お前が俺の腕を掴んだままポタに乗るからだろうが!」
 おおぅ、そういえば頼み込む時に腕を掴んで逃がさないようにしていたが…そのままだったとは。
「ってか、綿毛。お前、何時の間に読心術を!?」
「……全部口から漏れてるぞ? お前の心の声」
 な、なんだってー!
じゃぁ、俺のスウィィィィトな一目惚れ話も聞かれたってことか!
 いやん、恥ずかしいー(*ノノ)
「いやん、じゃねぇよ」
 ゴス、と勢い良くバイブルが頭に当たる。
あああぁぁぁ…俺の自慢の逆毛がががが。なんてことしてくれるんだ、この綿毛。
「…で? 何故コモド?」
 殴りプリの分際でバイブルを装備している綿毛に、『何故コモド?』なんて訊かれたくあーりーまーせーんー。
って、ゴメン! 嘘です嘘付きました! だから、+9トリプルブラッディチェインを装備するのは止めてくださいお願い!!
「だってさ、お金って必要だと思わない?」
「は?」
 綿毛の間の抜けた声に俺は気分を悪くしたぞ。あー、悪くしたね。
だってさ、お金は絶対に必要だぞ?
 、さん? 君? ちゃん? いや、ここはすでに呼び捨てでいこう。
俺のハニー予定だからな。
で、は、素のままでも充分に可愛い。いや、俺の目がおかしいとかそんなんじゃなくて! 惚れた弱みとかそんなんでもなくて!
 可愛いからさー。ちょぉっとお値段張っても可愛い装備を付けてもらいたいわけよ?
男のロマンってやつ。分かる?
 まぁまだ告白もしてない…ってか、ハニーは俺の存在を知らないだろうけど。
未来の俺達のために、用意をしておいても良いかなってわけ。
「……俺、その思考ってか、嗜好が似ている奴を一人知ってるな」
 俺の言葉に綿毛は目頭を押さえて項垂れている。
おぉ、綿毛の知り合いにもこのロマンが分かる奴がいるとは。その人とは是非、夜通し語り合いたいものだ。
「で、金の無い俺様は、ここコモドで一攫千金というわけ」
 はっきり言おう。俺は貧乏だ。
と慎ましく幸せな家庭を気付くだけのお金なら普段の狩りで稼げるが…。
 だが! やはり男のロマンは捨てられない! あぁ、捨てられないね。
大体世間一般で言われている『萌え装備』は、高すぎる。
 なんだ、男のロマンに対する嫌がらせか?ってくらい値段が高い。
ウサミミも黒ネコミミもツインリボンも目隠しも!
 あーもー、ならどれも似合いだろうな〜可愛いな〜〜〜デヘヘ。
の制服となら、仮初の恋とかも良いよな〜〜。頭装備は外さないまま( 以下、18歳未満の方には大変お見せできない妄想が繰り広げられております故、少々お持ちください )
「…心の声、漏れてるっての」
 はっ! そうだった!!
あーヤベ、あんな可愛いを、その辺の奴等に披露してしまった!
「むしろ、披露してしまったお前の可哀想な思考回路を心配しろ? な?」
 綿毛が五月蝿い。
大体この綿毛は何でここに居るんだ!……って、俺のせいだったな。
 まぁ、良い。
この綿毛が居ようが居まいが、俺は全財産を、この、スロットに賭けるぜ!
「ぜ、全財産って300kかよ…」
 綿毛、黙れ。
日々プロンテラの歓楽街で飲み歩いている俺(逆毛プリ)にしては300kの貯金なんて上出来だ。
 おっと、言っておくが、ハニーと出会った日から全てのオネエチャンとの縁は切ったぜ。あっはっは、愛の力は偉大だなぁ。
「…さよけ」
 さぁ、いざ勝負!!!!!!



















人間、地道にお金を稼ぐのが一番だということを学習した逆毛プリースト(INT>VIT型)25歳でした。