【if:睡魔】
ゆっくりと注がれる柔らかな午後の日差しは、人を眠気に誘うには充分な威力を持っている。
ハンターも例に漏れず、机に突っ伏したまま眠ってしまっていた。
そこに、子供が歩いてくる。
寝ているハンターを見つけると、二度三度瞬きをしてから起こさないように、そっと覗き込む。
子供の動きに気付かないくらいの熟睡なのか、街中、そして家の中という状況で安心しきっているのか、全く起きる気配がない。
起きないハンターに気をよくした子供は、いそいそと部屋を出て行く。
もちろん、音を立てないように細心の注意を払いつつ、だ。
次に子供が部屋に戻ってきた時、手にしていたのは一つの毛布。
子供の小さな身体では運ぶのに大変なのか、ヨタヨタと今にも倒れそうになっている。
それでも目的のものを目的の場所まで運ぶと、子供は大きく息をつき、それをそっとハンターにかけた。
満足そうに子供は微笑むと、ハンターの隣の椅子に座り、寝顔を覗き込む。
その姿は、ハンターが起きた時の反応を楽しみにしているようだった。
ゆっくりと注がれる柔らかな午後の日差しは、人を眠気に誘うには充分な威力を持っている。
「……何やってんだ? こいつら」
アサシンが部屋を訪れた時には、机に突っ伏して寝ているのは二人。
結局は、子供も午後の日差しの魔の手にかかったというわけだ。
「幸せそうに寝やがって」
せっかく来てやったのに、そうアサシンは一人ごちながら、ハンターにかかっている毛布を子供のほうにまで伸ばしてやる。
ふと目に入ってきた空いた椅子に、自分も座って寝てやろうかと思ったが、その姿をこの部屋の常連になっているアルケミストに見られたら気分が悪いと思い直した。
同時刻、露店をしていた件のアルケミストも睡魔には勝てずに寝露店になっていることは、アサシンには知る由も無い。
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